Interview | 時任海斗 個展「SANSUI」-会社員から画家へ、絵から生まれる物語-【後編】

Interview | 時任海斗 個展「SANSUI」-会社員から画家へ、絵から生まれる物語-【後編】

@kaito_tokito

 

FEELSEEN 4階のギャラリーで個展「SANSUI」を開催中の時任海斗さん。インタビューの【前編】では、1つの作品の風景の中に、いろいろな時間の流れとともに人の気配や動物の気配などが堆積しているような、イマジネーションあふれる作品をご紹介しました。


__今回の個展のテーマである「SANSUI」の作品は、また新たなアプローチで描かれているように感じます。


山水(SANSUI)をテーマにしたのは、2年前くらいに台湾へ旅行で行ったのですが、その時に「故宮博物院」という博物館に行って、そこにたくさん、水墨で描かれた巨大な山水画があって、なんとなく心の中に残っていて。

そのあとに『DEEP LOOKING(※)』という書籍を読みました。「溢れる情報に注意を奪われ続ける世界で、一枚の絵を深く観察することで世界とニュートラルに向き合う目を取戻す」という様な興味深い内容でした。

その中に、昔、中国で山水画が描かれていた時に、自分の前に巨大な山水画を置いて、その絵の中に入っていくような感覚で瞑想をするという、「瞑想の装置」として山水画が使われていたということが書いてあり、それが面白いなと思いました。

(※DEEP LOOKING 想像力を蘇らせる深い観察のガイド ロジャーマクドナルド著.2022)

これまで私は、絵の中に日常とはまた違うもう一つの時間を作る、というようなコンセプトで制作をしていました。そのコンセプト的なところも一致して、それで今回は山水画のスタイルに自分の作品を寄せていって、自分なりのカラフルな山水画を描いてみようと思い、今回のテーマに至ったという感じです。

 


 

__「SANSUI」の作品は、オレンジやピンクの色が印象的ですね。

 

色に関しては、わりと感覚的にオレンジとかピンクを実験的に描いてみようというのもありました。最初の個展の時に「発光体のゆくえ」という展示をやったのですが、その時、緑の風景の中に人物とか動物がオレンジや黄色で描かれている作品が多かったのです。

記憶の中とか曖昧な存在として、動物や人物を黄色でぼんやり、発光しているような感じで描いて。

それを、今回は岩肌がメインのモチーフなので、そのモチーフがやわらかく発光しているような感じにしたいと思って、黄色とオレンジで岩肌を描いているというのはあります。

 


2022年9月の個展「発光体のゆくえ」より

 

__色づかい、色彩のバランスが素敵ですね。

 

黄色とか赤とかオレンジは強い色なのですが、雰囲気はやわらかいものにしたいということは考えながら描きました。

 

 

__私も時任さんの作品を部屋に飾っているのですが、忙しかったりすると、呼吸を忘れるというか。もちろん息はしているんですけれど、時任さんの絵を見ていると、もっと深呼吸したくなる感じがします。絵をぼーっと眺めたり、ちゃんと深呼吸しようと思ったり。部屋に飾っていていつもそう思います。

以前に時任さんが「作品がもう一つの部屋の窓になる」というお話をしてくださったことがありましたね。

 

単純に風景画が多いので、部屋に飾ると窓みたいな役割になる。窓がもう一つ増えるような感じになるということをお客様からも言っていただいたことがありました。

風景を眺める窓が一つ増えるというのと、あとは絵の中に長く滞在してもらえるような仕組みというか、なにか仕込みをしていて、たとえば色んなタッチを使ったりとか、絵がレイヤー状になっていて、自分のピントをどのレイヤーに合わせるかで絵の中を回遊できるような感じにしたいなとか、

見る人が絵の中に長く滞在できるようなものを作ることで、その人の家の中での時間が豊かになるんじゃないかなとは思っています。


__そうですね!お話を聞いて、作品がもっと好きになりました。


最後の質問です。
時任さんにとって、日々の暮らしの中でのアートはどんな存在ですか。


アートは時間を緩めてくれる存在です。

忙しない日々の中で情報に対して受動的になりがちですが、アート作品の鑑賞は時間を一度緩め、主体的に世界と向き合うきっかけになります。


__時任さん ありがとうございました。


個展を訪れた方々にはギャラリー内で瞑想するように作品を楽しんでいただいています。個展の会期は今週日曜、6月22日まで。実際に作品を観て、いろいろなことを感じていただきたいです。

遠方の方はInstagramのライブ、オンラインでも作品をご紹介していますので、是非ご覧ください。


▶時任さんのエッセイ Creator’s note
 
▶インタビュー「会社員から画家へ、絵から生まれる物語」【前編】


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時任海斗 個展「SANSUI」

会期:2025年5月31日(土)〜6月22日(日)
12:00~19:00
※最終日の6月22日(日)は17:00まで

会場:FEELSEEN GINZA

▶個展「SANSUI」についてはこちら

 



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