Interview | 時任海斗 個展「SANSUI」-会社員から画家へ、絵から生まれる物語-【前編】

Interview | 時任海斗 個展「SANSUI」-会社員から画家へ、絵から生まれる物語-【前編】

@kaito_tokito

 

昨年、「SHIBUYA AWARDS 2024」(アート作品のコンペティション)にて小山登美夫賞とオーディエンス賞を受賞し、注目を集めている画家の時任海斗さん。受賞後初の個展「SANSUI」を今年3月のFEELSEEN KOBEに続き、現在FEELSEEN GINZAで開催中です。(~6月22日(日)まで)


__ FEELSEENでの個展は今回で4回目になりますね。神戸店、銀座店にはすでに時任さんを知っているお客様も多いですが、あらためてプロフィールを伺います。

時任さんは、1992年沖縄生まれ、福岡育ち。大学を卒業した後、会社員をしながら絵を学び、画家になられたそうですが、そもそも絵を描こうと思ったきっかけは?


会社員になって、学生の時と違って欲しいものが買えるようになったけれど、労働→消費→労働→消費のサイクルで自分で何も生み出していないことにだんだん違和感を感じはじめました。そんなときに家の近くにカルチャー教室のような水彩画教室があるのを見つけて、なんとなく通い出したのがきっかけです。それが2018年頃です。
 


__もともと絵を描くことは好きだったのですか。


親に連れられて美術館に行ったりはしていましたが、最初の衝撃は中学生の頃に読んだ、松本大洋さんの漫画でした。フリーハンドの温かみのある線を真似して学生の頃、机に落書きをしたりしていました。その時は作品を作ろうとかは思っていませんでしたが、イラスト集を買ったりしていました。作品を作ろうと思ったのは、社会人になってからです。

松本大洋さんは日本の漫画家。代表作に『鉄コン筋クリート』『ピンポン』など。

 


画家になったのは、木村タカヒロさんの私塾に通ったことがきっかけです。個性を矯正しない方針が自分に合っていました。

絵を描き始めるのが遅くても、積み上げてきた美意識を作品制作に活かすことができるという考えは、描き始めたのが遅かった自分には救いになりました。



__先ほどのお話によると、水彩画教室に通い始めたのが2018年、それから6年目の2024年に「SHIBUYA AWARDS 2024」で小山登美夫賞とオーディエンス賞を受賞されたのですね。改めまして、おめでとうございます。


*作品は非売品ですが、所蔵企業さまのご厚意により、FEELSEENの個展でも展示させていただいています。会期中にぜひご覧ください。

 

こちらの受賞作は「風の大きさを知るために」というタイトルですね。今回の個展の新作にも素敵なタイトルがついています。例えばこちらの作品は「パラダイス、あるいはその気配」。



__時任さんの作品には、いつも印象的なタイトルが手書きで添えられていて、作品へのイマジネーションが膨らみます。タイトルはどのようにつけているのですか。
 

つける順番としては、まずは作品が先にできて、その後にタイトルをつけるのですが、
こういうストーリー性をもって作品を作ろうというのは最初はあまりなくて、絵を描いてから絵から物語が生まれるという感じでタイトルをつけています。




__オレンジ色が印象的なこちらの「Warm space」という作品は?


photo: Kaito Tokito



この作品は、即興的に描いて、後からタイトルをつけるという感じなのですが、左上に人物みたいなものが線で描かれていたり、小さい人がやはりこの絵にもいたりとか、小さい白い点というか、浮遊物のようなものが浮かんでいたりして、一つの風景の中にいろんな時間の流れと共に、人の気配とか動物の気配とかそういうものが堆積していっているところを表したくて、それで多次元的な、多層的なレイヤーが作品になっています。


これは割と今回、どの作品でもトライしてみようと思った試みです。

この絵は赤っぽいオレンジっぽい色が多く使われていて、これも何か狙いがあるというよりは、実験的に赤を基調に描いてみようと思って描いたもの。そのあとに、絵から温かい印象を受けたので「Warm space」というタイトルがつきました。


 
__壁に飾ると、お部屋もあたたかな雰囲気になりますね。個展でその隣りに並んでいるこちらの作品は「Door」です。



真ん中に鹿のような動物が大きく線で描かれているのですが、これも動物の気配みたいなものを描きたいと思って描いていて、自然と対峙した時に、そこにはいなくても、かつていた動物、他にいたであろう動物に思いを馳せることがあって、そういうものを描いている、という感じです。



__ 今そこに(描かれて)いるものと、かつてはいたかもしれないもの。現在と過去、未来。多次元な気配を感じます。Doorというタイトルも素敵ですね。

 
Doorにしたのは、最近兵庫県に引っ越して、そこがけっこう山間の町なんですけど、引っ越して3ヶ月後くらいに森に入る入口みたいなのを偶然見つけて、そこに入った時に世界が開けた感じがして、その感覚とこの絵の印象が近いかなと思ってこのタイトルにしました。


__作品の森の中に引き込まれてしまいました。
時任さんの作品、ほとんど全ての作品に小さな人物像が描かれているのですが、これにはどのような意味が込められているのですか。
 




この人はだれですか?とよく聞かれるのですが、見る人によって色々想像してもらえるようなものになればいいと思っていて、自分に置き換えてその作品の世界に入っていくきっかけになったりとか、どんな人だろうって想像してもらって、物語をそこから考えていくようなきっかけになったり、あとは、(少し戦略的なところで言うと)作品の中に人を小さく置くと、その風景が急に大きくなる、そういう狙いもあってどの作品にも小さく人を置いています。


__なるほど。それを聞いて、改めて作品を観てみるのも楽しいです。


最初、見る人が小さい人を見つけられなくても、人を見つけた瞬間に、急に世界のサイズ感が大きくなるという仕掛けでもあります。



__今回の個展では、「心象山水図」というタイトルの約90x60㎝の大きな作品も展示しています。個展のテーマにもなっている「SANSUI」については、インタビューの【後編】で伺いたいと思います。



 
奥の壁の作品「心象山水図」
910x606mm 
キャンバスにアクリル
2025年に制作
▶詳細はこちら 



時任海斗 個展「SANSUI」は、6月22日(日)まで。
FEELSEEN galleryへぜひお立ち寄りください。

会期:
2025年5月31日(土)〜6月22日(日)
12:00~19:00
最終日の6月22日(日)は17:00まで

会場:
FEELSEEN GINZA


個展「SANSUI」についてはこちら

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