Creator’s note | Ayuko Hazu 『ぬいぐるみと私』前編

Creator’s note | Ayuko Hazu 『ぬいぐるみと私』前編

 

ぬいぐるみと私

ご縁があって、ぬいぐるみを展示させていただいたFEELSEEN 銀座店。
店名が”I feel seen.”つまり「見られている気がする」という意味から来ていて、「見透かされている」と言うニュアンスがあるようです。

そういえば私は、幼い頃からぬいぐるみに自分を全て見透かされている、と感じていました。


10代の後半までその感覚は続き「私が寝ている時や留守の時、ぬいぐるみ達はおしゃべりしているかも」と思っていました。とはいえ、現実的にそんなことを信じきっているわけでもなく、なんとなくその感覚を否定できずに過ごしていました。
学生時代、私は友人に「ぬいぐみが生きているような感覚があるんだよね」と話した記憶があります。


幼少期から私は、たくさんのぬいぐるみに囲まれて育ちました。


私の父は海外出張が多く、どこかの国へ行ってはぬいぐるみをお土産として買ってきました。
モスクワ出張で買ってきたシロクマのぬいぐるみは、モスクワから来たのにタグに”Made in China”とあり、体長50cmほどのふっくらした可愛い子でした。私はこの子に『ママ』と名付けました。
シアトルから来た茶色いクマのぬいぐるみは、体長60cmほどのパペットにもなるヘンテコな顔の子で、名前は『パパ』でした。
他にもたくさんぬいぐるみはありましたが、名前を付けたのはこの2体です。
この2体は、おもちゃカゴには決してしまわれない、いつもそばにあった大切な友達でした。


でも大人になったある時、過去の記憶の重さに耐えられなくなった時期があり、それまで持っていた大事なものをたくさん捨てたことがありました。
胸が痛みましたが、ママとパパもその時に処分しました。


今でも時々、「会いたいな」と思い出すことはありますが、あの儀式は自分には必要なことであったと思います。そして彼らは、私の人生にとって大切な役目を果たしてくれたんだ、と感謝しています。


ずっとぬいぐるみは、私のことを見透かし、見守り、いい友であり庇護者でした。
でもママ・パパと離れることでその時代は終わり、ぬいぐるみをたくさん作るようになった今、彼らは私にとっての友人であり子供となった気がします。


私のぬいぐるみも、誰かの人生のいっときを支えることができたなら、といつも願いを込めています。

 

人形作家
波津 あゆ子

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波津 あゆ子さんの作品はFEELSEEN銀座店、オンラインストアにてご紹介しています。
Online store

 

■作品展示中
AYUKO HAZU Exhibition
2025年4月19日(土)〜
@FEELSEEN GINZA 3F 


*ユニークピースの為、完売時に展示が終了いたします。予めご了承ください。
*作品はご購入時にお持ち帰りいただけます。

 

波津あゆ子
幼少期をブラジル、日本、イタリアで過ごす。
国際基督教大学卒業後、文化服装学院にて洋裁を学ぶ。
都内プレタポルテ縫製職に従事後、作家活動を開始。
代表作にテレビ東京ドラマ「僕の姉ちゃん」オープニング人形など。

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